書評『経済学に何ができるか』
経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)
- 作者: 猪木武徳
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/10/24
- メディア: 新書
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今、売れている新書です。経済学の考え方から、税と国債、金融政策のあり方、インフレ、幸福学、ユーロ危機、消費や投資など、様々な問題を読み解いた本です。エッセイのようにテーマごとに読み切りできます。
タイトルの意味は、
世の中の問題はすべて純粋な経済問題だけにとどまらず、人それぞれの価値観や政治などの要因を受けるため、経済学だけで世の中の問題を解決する事は不可能だという事です。個々のテーマを経済学で考える中で、この結論を導き出しています。
最近、『世界の経済学者はいま何を考えているのか』や『知の逆転』など、非常に教養レベルの高い本が売れているようですが、本書も雰囲気は似てます。結構、いい本だと思います。
書評『リピータビリティ』
Repeatability リピータビリティ ― 再現可能な不朽のビジネスモデル
- 作者: クリス・ズック,ジェームズ・アレン,火浦俊彦,奥野慎太郎
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/11/29
- メディア: 単行本
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訳者が悪いのか、著者が悪いのか。わかりにくいです。
言っていることは、単純でなるほどという事なのですが、なぜかわざと難しく書いているような気がしてなりません。
変化の激しい時代には、戦略も組織もシンプルにせよ。
そして、変化に応じて、修正、試行していく事が大事だ。
というわずか2行で済みそうな内容なのですが、とかく難しく書いてあるように思います。
副題の「再現可能な不朽のビジネスモデル」とは何なのかという事ですが、事例としては、IKEAやインドの弁当配送サービスなど挙げられています。
つまりシンプルに一見、誰でもできそうなビジネスモデルなのに、なぜか他社が参入できないほど確立されたビジネスモデルのことを指すようです。トヨタもそうで、カイゼンの仕組み自体は、すでに知られている通りだが、マネできない。
結局、自社の強みを見つけ、そこから単純化し、繰り返す。そのことで、強力なビジネスモデルを構築できるということなのですが。
完全に「言うは易し」の世界です。
読んでいて、うまく頭に入ってこなかったので、書いていても今ひとつパッとしません・・・。
書評『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』
- 作者: 金子哲雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/11/22
- メディア: 単行本
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昨年41歳で亡くなられた流通ジャーナリストの金子哲雄さんの遺作。
流通ジャーナリストになるまでのことや人気になるまでのストーリー、闘病生活のことが書かれています。
闘病生活の部分を読んで、これを書いた方が、もうこの世にいないというのも、リアリティがあって怖いなと思う部分もありますが、内容としては、かなり良い本です。
なるほどと思ったところは、どうやってジャーナリストという商売が成り立っていくのかという点。金子さんの事例は次の通り。
・大学を卒業し、将来独立した時に顧客を持つために石油会社に入社する。
・ガソリンスタンドのオーナーはその土地の名士である事が多い。入社して関西のガソリンスタンドを担当する。
・やり手のオーナーに会い、いかに喜んでもらうかを考えた末に、そのオーナーのお孫さんが受験という事で勉強を見てあげる。
・そのお孫さんが受験に合格し、オーナーから感謝される。そのオーナーは、経営者仲間に「金子に世話になった」と言い回ってくれる。
・石油会社を1年で退職。独立するもすぐには仕事なし。
・そのガソリンスタンドのオーナーから、講演会の依頼が来る。
・中小企業の経営者に共通するのは「1円でも安く」。そこで、いかに節約するか、コストをかけずに集客するかといった話をすると大盛況。
・講演に来た方から、さらに講演の依頼を受け、講演が営業となって仕事が入ってくる。
世の中のコンサルタントはどうやって仕事を取っているのかと思っていましたが、こういう仕組みなんですね。
「最初のきっかけ」×「良いコンテンツ」×「クチコミ」
ビジネスにおいて大事なことが学べます。
書評『佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか?』
- 作者: 佐藤可士和
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2012/12/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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130ページほどなのですぐに読めます。
アートディレクターの佐藤可士和さんへのインタビューです。
この本、雑誌の連載を本にまとめたものです。
最近、この雑誌の記事を本にしたものを手に取ることが多いのですが、偶然でしょうか?
本の内容と関係ない話になってしまいますが、雑誌の記事を編集しなおして本にする事の意味について考えていました。
雑誌と違って、本にするとテーマが1本通るので、著者の考え方がより鮮明になるのですよね。これは本というまとめて、読むメディアの一つの特徴であり、本にしかない強みだなと思いました。
雑誌だと、そのインタビューを読んで、そのまますぐに記憶から抜け落ちてしまうのですが、本だとその読んでいる中で、一つや二つひっかかる部分がある。本というものを見直すヒントかもしれません。
さて、本の内容ですが、学生さんへ向けた内容が多いです。どのアドバイスも納得です。サプライズはないです。
一番なるほどと思ったのは、佐藤可士和さんが、インターンの面接をする時に几帳面かどうかを質問し、几帳面だと堂々と言える人を採用基準にしていること。
いわく、クリエイティブの世界は、0.1ミリの配置の違いや、数%の色味の差の検証だとのこと。相当の几帳面でなければ続かないと。
まさに職人の世界なんだなと思いました。几帳面というと、融通がきかない、神経質といった負のイメージがありますが、なるほど、そういう日本人的なキチッとした感性は大事なのですね。
書評『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』
社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた――マッキンゼーでは気づけなかった世界を動かすビジネスモデル「Winの累乗」
- 作者: 小暮真久
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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NPO法人『テーブル・フォー・ツー』代表の本。
タイトルの通り、社会起業のしくみの作り方の説明です。といっても、教科書的なことが書かれており、細かい点には踏み込んでいないので、これを読んでも、実際に社会起業家になれる訳ではありません。
いや、そもそも本を読んで社会起業家になるものでもないと思います。結局、走りながら学んでいくしか方法はない。マニュアルで起業のやり方だけ知ってもあまり意味はないと思います。
さて、この本のサブタイトルでもあります「マッキンゼーでは気づけなかった世界を動かすビジネスモデル「Winの累乗」」とは何かという話ですが、要するに社員、取引先、顧客、社会、協業先すべてとWin-Winの関係を築きなさいというもの。
この先は、社会的に素晴らしい事をしないと、うまくいきませんよ。というもので、近江商人の三方よしの拡大判といったところでしょうか。
前作の「テーブル・フォー・ツー」の内容を説明した本の方が良かったです。でも、著者の生き方や実際の現場には興味あります。そのあたりの現場の事を知りたかったな。次回作に期待。
書評『選択の神話』
- 作者: ケント・グリーンフィールド,高橋洋
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2012/12/13
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『選択の科学』のシーナ・アイエンガー推薦とのことで読んでみました。
行動経済学の本というよりは、「選択」というものについて論じた本です。
簡単に内容をまとめると、
私たちは自分のした選択は、自由意思に基づいていると思っているが、現実には次の要因で制限を受けている。
①脳の構造
プライミング、ビキニ効果、アンカリングなど、様々な認知バイアスによって、人の選択は操られている。
②文化
宗教、ナショナリズムなどの環境によって人の選択は知らずに制限されている。
③権力
人は、権力に従うという性質があり、例えばナチスのように、本人は気が付かずに妄信してしまう事がある。
④自由市場
すべてお金によって、分配される市場では、お金があれば選択の自由は広いが、お金がなければ、その自由はないに等しい。
よって、選択を行った責任は、すべて自己責任という考え方は、いささかやり過ぎであると。人はどうしようもない選択に迫られることがあり、その事を認識している事、他人の選択に対し、耳を傾け、その状況などを察する能力が大切である。また、個人だけでなく、公共政策の点からも選択をある程度制限することは妥当である。
といった内容です。
著者が法学者なので、どちらかというと、米国で規制に対して反対するリヴァタリアンや保守主義に対する批判がメッセージになっています。
値段の割には、期待したほどでもなかったです。
書評『弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー』
- 作者: 高橋秀実
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 単行本
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東大合格数が日本一の超進学校の野球部は強いのか?
かなり笑えます。
ノンフィクション作家の著者が、開成高校に取材したストーリーで、監督や選手へのインタビューなどで構成されているのですが、ユニークです。
開成高校野球部は週1回しかグラウンドが使えない。さらには試験期間は2週間ほど活動ができない。その少ない練習時間でいかに、勝つかを突き詰めた考え方が面白いのです。
要約はコチラ
http://www.bookvinegar.jp/book/12206/
『もしドラ』よりもこちらの方が面白いと思います。
ぜひ、映画化して欲しいなと思います。
勉強においては、超エリートな選手たちも、野球では弱小。
そんな彼らが、理屈でモノを考えながら、野球に取り組んでいる姿を想像すると笑えます。