書評『直感力』
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/10/16
- メディア: 新書
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羽生さんの本。
棋士に必要な力は『読み』『大局観』『直感力』の3つ。
若い時は、計算力や反射能力を使った『読み』を使った将棋をするが、年齢を重ねるごとに『大局観』と『直感力』の比率が高まるものらしい。
『大局観』と『直感力』は、経験の積み重ねによって、得られるものと書いている。
これって脳のパターン認識ですよね。
脳は省エネをするために、パターンを認識し、それを覚えることで反射的に物事を処理する特性がある。この直感力というのも、数々の棋譜を読み、それを引き出すという思考を繰り返すことで、合理的な思考を瞬時に引き出せるようになる。
羽生さんは、直感力は経験からくるもので、多様な価値観に触れることで、直感力も磨かれると書いている。
確かにおっしゃる通りなんだろうなと思いました。
興味深かったのが、どのように棋士は思考しているのかという点。
将棋はひとつの場面で約80通りの可能性があると言われている。その中から最初に直感によって、2つないし3つの可能性に絞り込んでいく。残りの77とか78という可能性については捨てる。大部分の選択肢は見た瞬間に捨てているということになる。
その2つないし3つ選び出す作業とは、写真を撮る時のようなものだと捉えている。ピントを合わせるような作業が直感の働きである。なんとなく、ここが急所ではないか、要点ではないかといったことを、それまでの自分自身の経験則や体験、習得してきた事の一つの表れとして掴むことができたら、そこに直感が働いている。
9割以上の選択肢は、瞬時に捨てるんですね。
確かにすべての可能性を計算するのは、コンピュータでないと無理です。
その9割捨てるという作業を、経験によるパターンが代行してくれるという訳です。
人間の脳って凄いなと思いました。
ちなみにこの『直感力』という本。面白いのは初めの1、2章だけで、後は普通です。
前作の『大局観』の方が面白いです。