本とぽんず

ビジネス書籍の書評などをあれこれ綴るブログ

書評『運をつかむ技術』

 

エイチ・アイ・エス創業者の澤田さんの本です。

開業以来18年間赤字だったハウステンボスを1年で黒字化させた話が書かれています。

かなり面白いです。

 

そして、澤田さんのエイチ・アイ・エス創業の話も書かれていて、これまた面白いです。

 

澤田さんは、高校時代にアルバイトでお金を貯めて、ドイツに留学します。当時はまだ、海外旅行など一般的でなかった時代に、単身シベリア鉄道でヨーロッパに渡り、留学するのですから、かなりの行動派だった事がわかります。

 

ドイツ留学時代には、ドイツに出張してくる日本人の通訳のアルバイトをして稼いだそうです。そこでリクエストの多かったのが、観光したいからガイドをしてくれというもの。当時は、まだ海外のガイドブックといったものもなく、どこを観光すれば良いかもわからない時代だったそうです。

 

そこで、澤田さんはいろんなお店を調べて、ツアーを作り、ホテルのマネージャーなどに声をかけ、日本人が来たら紹介料を払いお客さんを紹介してもらった。現地の店にも喜ばれ、海外出張で来る日本人客にも喜ばれる。すべての人がハッピーになる。この三方よしといいますか、近江商人のような考え方が経営の原点になったといいます。

 

旅行好きだった澤田さんは、留学時代には多くの国を周り、多様な価値観に触れます。東南アジアでは、熱病で死にかけたこともあるそうです。人はいつ死ぬかわからないという気づきを得て、人生はチャレンジする事に価値があるという人生観が作られたそうです。

 

帰国後、澤田さんは、新宿にオフィスを借りて、毛皮の輸入商社を設立します。当時、毛皮は日本と欧州では大きな価格差があったようで、十分に利益がでるビジネスと睨んだのでした。それが、結局ワシントン条約の締結により、規制されることになる。

 

こうして、仕事ができなくなった澤田さんは、海外で売られている格安航空券を取扱い始めた。それがエイチ・アイ・エスとなった訳です。

 

 

さて、本書の主題はハウステンボスの再生にあります。

その部分についても紹介しておきたいと思います。

 

なぜ18年連続のハウステンボスを1年で黒字化できたのか?

その理由には、以下の点を挙げています。

 

・従来の「オランダの街並みを忠実に再現し、オランダに行かずとも雰囲気が味わえる」というコンセプトを超える価値を創り出す事を考え、顧客に喜んでもらえるイベントやアトラクションを次々に投入したこと。

開業当初は、なかなか行けなかったオランダも、今は格安で行く事ができる。だからこそ、他の魅力をうったえる必要があったと。

 

・経費の徹底的な見直し、従業員の意識改革を行った。18年間負け続けだった従業員のモチベーションは下がり切っていた。そこで、①嘘でもいいから明るく元気に、②掃除をしよう、③増収経費削減で黒字化したらボーナスを出す、この3つのシンプルなメッセージを繰り返し伝えた。

 

・面積の1/3を無料エリアとして開放し、新しい試みや、ベンチャー企業の誘致を行い、活性化。無料エリア化による維持コストを削減し、有料エリアにリソースを集中させた。

 

さらっと書かれていますが、いずれも簡単な事ではないと思います。本書でも書かれているように、ハウステンボスは、東京ディズニーリゾートの商圏の1/20、福岡からでも特急で2時間かかる立地にある。さらに施設が老朽化しているにもかかわらず、リニューアルの資金はなかったのです。

 

これは単純に澤田さんの力量だけによる成功なのかはわかりません。しかし、これまで様々なプロたちが立て直しに奔走してきたのに、なし得なかったことを澤田さんはやり遂げた。やはり、起業家として、経営者としての格が違ったという事でしょうか。