書評『世界の経営学者はいま何を考えているのか』
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世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
- 作者: 入山章栄
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2012/11/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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海外のビジネススクールにおける経営学者たちが何を研究しているのか。競争戦略、イノベーション、組織学習、M&A、国際起業といった幅広い経営学の最新トピックを簡単に紹介している本です。
本にはある程度、新しい発見がないと面白くないと思います。
そういう意味では、この本は知らなかった事が結構盛り込まれているので、普段から経営書を読んでいる人も楽しめると思います。
さて、世界の経営学者はいま何を考えているのか?
この本は、総論と11の各論から成り立っています。ので、中から面白かった部分をいくつか紹介します。
①ポーターの競争戦略だけではもう通用しない
マイケル・ポーターの競争戦略と言えば、競争戦略の古典です。その要点は、企業が持続的な競争優位を確立するためには、差別化によって、ユニークなポジションを取らねばならないというものです。
しかし、最近の研究では、アメリカ企業の中で持続的な競争優位を確立できているのは2〜5%に過ぎないというのです。近年は、競争の激化により、競争優位を維持できる期間が短くなってきていると。さらには、競争優位を失った企業が、再度競争優位を獲得する事例も増加してきているとか。
つまり、競争が激化している昨今の環境では、競争優位とは一時的なものであり、それを鎖のようにつなげる事で、企業は長期間にわたって高い業績を得るそうです。そして、競争優位を得るにあたって、企業は積極的な攻めの競争行動をする事で高い市場シェアをとることができるそうです。
今はポーターの頃とは、環境が違うという事なんでしょうね。
②イノベーションのジレンマは古い?
最先端のイノベーション研究では、イノベーションのジレンマよりも「両利きの経営」というものが注目されているそうです。両利きの経営とは、右手と左手を両方使えるように企業は、知の探索と知の深化の両方をバランスよく実行する事が必要だと説き、そのような環境を組織に構築しなければならないというものです。
イノベーションのジレンマと同じように、イノベーション停滞のリスクを論じているものの、両利きの経営では、それを組織に内在するリスクとして捉えているのが異なる点です。イノベーションのジレンマは、どちらかというと経営者が、成功事例からイノベーションの可能性を探索する事を見落とすというものです。
こうした一歩先の研究が紹介されていますので、この分野に興味のある人にはオススメです。知的好奇心をくすぐられます。
ただ一点、注文を付けるとすれば、後半になるに従って、各論がしょぼい点。グラノベッターの「弱い結びつきの強さ」あたりから、知ってる内容が増えていき、まあそうだろうなという当たり前に思えるような事が論じられていたりします。
この本は2009年から書き始められたらしいです。そして著者の初めての作品。
やはり、初めて出版される本は、気合いが入っているというか、いい本が多いように思います。