書評『ずる』
ずる―嘘とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション)
- 作者: ダンアリエリー,Dan Ariely,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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行動経済学の第一人者ダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』『不合理だからすべてがうまくいく』に続く3作目です。
今回は、「人間はなぜ不正をはたらくのか?」をテーマにしています。
巨額の不正経理で破綻したエンロンに関わっていたコンサルタントに著者が出会い、その時にコンサルタントが「当時は不正を働いていた雰囲気はなかった」という言葉に興味を持って書いたと言います。
エンロンの不正は、幹部数名が行った訳ではない。会社にいる多くの人が小さな不正を積み重ねて、やがて破綻したのだと。私たちは誰でも小さなごまかしをする。
私たちの行動は、2つの相反する動機づけによって駆り立てられている。私たちは一方では、自分を正直で立派な人物だと思いたい。だがその一方では、ごまかしから利益を得て、できるだけ得をしたい。
この2つの矛盾する事を解決するために人間はどういった思考をするのかを数々の実験で表していきます。
なお、不正を解決するには、どうすれば良いのか?
いくつかの方法が提示されていますが、最も効果的なのが、道徳心を呼び起こすものだそうです。倫理基準、聖書、誓約書、署名など。相手に不正をすることが、自分の人格を傷つけると思わせる。
人はみな自分を良く見せたい。
前作に比べて、テーマが一つに絞られているために、驚きは少なく、ややくどい感じはありますが、よくできた作品だと思います。