書評『ビジョナリーであるということ』
- 作者: パヴィスラ・K・メータ,スキトラ・シェノイ,矢羽野薫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 単行本
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この本を読んで、インドのアラヴィンド眼科病院のことを初めて知りました。
アラヴィンドは、一人の医師が「失明を根絶する」という信念をもって、立ち上げた病院で、革新的なシステムで、多くの貧しい人々を救っているそうです。
「大量、高品質、手頃なコスト」。この3つをモットーとして、受付から退院までのプロセスを完全に流れ作業にすることで、これを実現しています。看護士やカウンセラー、技師など各専門にスタッフを特化させ、いかに一人の医師の手術時間を確保し、効率よく手術するかを徹底し、他の病院の5倍のパフォーマンスで件数をこなすそうです。
「西洋の下位中流層の多くがファストフードを買えるように、途上国の人にも手が届く白内障手術を提供するしくみをつくれるはずだ」
まさに医療にマクドナルドのシステムを組み入れた訳です。
アラヴィンドでの治療は、患者が任意でお金を支払う仕組みになっています。貧しい人は無料。こうした仕組みでも、十分に黒字を確保して、財政的な自立を保っています。
その信念だけでなく、無料とする事で、多くの人がその評判を広げてくれる、また患者数が多くなる事で、医師の技術の向上が早いなどのメリットを得ています。
これって、医療のフリーミアムモデルです。まさか医療でこの収益モデルが成り立つとは思いませんでした。
アラヴィンドのケーススタディは、ハーバード・ビジネススクールで20年以上、使われているそうです。
このシステムも凄いですが、こうした社会起業を立ち上げた医師も凄いです。
人間の意思の凄さ、ビジョナリーとはこういう事を言うのだと納得しました。