本とぽんず

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書評『一生の仕事が見つかるディズニーの教え』

一生の仕事が見つかるディズニーの教え

一生の仕事が見つかるディズニーの教え

 

20年間オリエンタルランドで勤務後、難病の子供とその家族をディズニーランドに招待する活動をされている方の本です。

 

企業から研修として、ディズニーランドで案内するボランティアを受け入れる形で、収益を得ている。まさに社会起業とも呼べるモデルになっている活動だと思います。

 

個人的に、社会起業家に関する本は、意識して選ぶようにしています。というのも、これから大切になる価値観とは何かと考えた時に、経済的自立と利他の精神を両立させている社会起業というものは参考になるのではないかと思うからです。

 

人間の幸福にとって金銭が与える影響は、購買力平価で年15000〜20000ドルまででそれ以上だと、あまり効果が上がらないと幸福学の研究では言われています。どれだけお金を持っていても、それで幸せになれる訳ではない。もちろん、最低限の金銭は必要です。

 

しかし、経済的にも成熟した日本には、金銭的な幸福を追求するよりも、利他を通じた幸福の追求が大切なのではないかと思います。

 

もちろん、ユニクロの柳井さんが言うように、お金を稼いでこそ、人間の幸せがある。稼いでいる人がいるからこそ、経済が成り立っているのであって、日本人はもっと稼げという考えは大事です。しかし、必ずしもガツガツと働いて、稼いでいける人は、どれだけいるでしょうか。

 

稼げない人はどのように幸福になれば良いのか。そこに社会的意義のある価値観として「利他」という活動があると思うのです。何も皆がボランティアをしろという訳ではないです。ただ、人のために与える事で、自分も幸せを得るというのは、お互いにメリットのある事だと思います。

 

この本の著者は、40歳を過ぎて、ゼロから公益社団法人を立ち上げます。オリエンタルランドを辞めた時点では、計画も資金もツテもない。そこから、手紙を書いて聖路加病院の日野原重明氏に顧問になってもらい、一橋大学野中郁次郎教授からも協力を取り付けています。

 

そして、ご多分にもれず、資金繰りに苦しみながらも、活動を広げています。そうした起業活動のストーリーもさらっと書かれているのですが、これは凄い事だと思います。

 

やりたい事が見つからない人向けに書かれている本ですが、こうした修羅場をくぐり抜けて、社会のために活動されている人の言葉は重みがあります。ありきたりのディズニー本で終わっていないところが、良いなと思いました。