書評『アップル、グーグル、マイクロソフト 仁義なきIT興亡史』
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- 作者: チャールズ・アーサー,林れい
- 出版社/メーカー: 成甲書房
- 発売日: 2012/10/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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タイトルが冴えない。
もう少しタイトルを考えれば、売れたであろうに。
マイクロソフト、グーグル、アップルの3社の戦いを「検索エンジン」「デジタル音楽」「スマートフォン」「タブレット端末」の項目で取り上げ、その歴史を淡々と語っている本です。
正直なところ、アップルについては数々の本で語られているので、もう十分といった感じですが、グーグルの部分は面白かったです。
グーグルが当初、マイクロソフトを警戒して、なるべく目立たないようにしていた事。一方のマイクロソフトは、検索分野には全然注目しておらず、気が付いた時にはグーグルが不動の地位を得ていた。
そこからマイクロソフトは、新しい検索エンジン、現在のBingを開発するのですが、致命的なミスを犯しているのです。1つが、オーバーチュアを買収する事をバルマーが反対した事。検索表示されるキーワードにクリック課金する広告モデルを見逃してしまったのです。当時、バルマーはオーバーチュアが広告主を持っているという価値に気が付かなかったそうです。
そして2つ目のミス。それがリンクエクスチェンジを過去に買収しており、キーワード広告という事業を持っていたにも関わらず、それを廃止してしまっていたこと。当時、キーワード広告は、MSNの純広告と対立するものとして、部署間の争いで廃止になってしまたっといいます。ちなみにリンクエクスチェンジという会社は、ザッポスCEOのトニー・シェイが共同創業した会社でもあります。
この2つのミスにより、マイクロソフトは検索、広告の2つを一から開発することになり、失敗する。当時は、グーグルなど第2のネットスケープだという過信もあったようです。
しかし、結果はご存知の通り。Bingはとても成功したとは言えず。敗因の要因は、グーグルに対し、人々は特段の不満をもっていなかったと事を挙げています。
400ページあり、かなり読み応えがあります。
知っている事がほとんどではありますが、IT関連の歴史書として、この分野が好きな人にはオススメです。
14年前、スティーブ・ジョブズは、マイケル・デルに「将来性がないからたたむべきだ」と言い捨てられたそうですが、世の中はわからないものです。経営者の資質、運、努力、いろんな要素があって事業の成否は決まる。
そのデルは、台湾メーカーのASUSに、アウトソーシングする事で、競争力を失ったという話も面白いです。はじめはマザーボードの外注だけだった。これは、デルにとっても、資産を減らし、財務指標を改善する効果があり喜ばしい事だった。しかし、ASUSがうまかったのは、これだけで終わらなかったこと。
デルは、ASUSにパソコン全体の組立て、やがてはサプライチェーン管理、コンピュータの設計までアウトソーシングした。デルの財務指標は良くなったが、手元に残ったのは、デルというブランドだけだった。
ASUSが満を持して発表したのは、自社ブランドのパソコンの製造事業であった。デルは台湾メーカーのパソコンにデルという名前を貼付けるだけの会社に成り下がってしまったのだ。
ちょっと、長々と書いてしまいました。
デルのお話は、この本では書かれていないのですが、スマートフォン戦争におけるマイクロソフト、アップル、グーグルのそれぞれの戦いなど、なるほどと思わせる内容でした。