本とぽんず

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書評『MEDIA MAKERS』

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

 

R25」「BLOGOS」の立ち上げに携わり、「LINE」や「NEVERまとめ」の広告マネタイズを統括している方が書いた本。

 

メディアに携わる人ならば、必読です。

 

特に考えさせられる部分が、メディアがどんどん「ノンリニア化」しているという点。ノンリニア化とは、コンテンツが断片化されてバラバラになっていることを言います。つまり、最初から順をおって見なくてもよいコンテンツを指します。例えば、ニュース記事などがそうです。

 

かつてはテレビの前で何時間も座って楽しんでいたゲームが、今はソーシャルゲームとなって、細切れの5分、10分で楽しむものに変わってきている。音楽は1枚のアルバムとして楽しむのではなく、CMなどで使われたヒット曲など、好きな曲だけをiPodなどで飛ばして聞く。iTunesにいたっては、音楽のバラ売りだ。

 

これを読んで、確かにユーザーに長時間コンテンツを楽しませる事のハードルがどんどん上がっているなと思いました。映画、小説といった1つのコンテンツに何時間もかかるものが敬遠されていく。昨今の本離れもそうした傾向の一つでしょう。

 

著者は、ウェブメディアにおいては、こうしたノンリニア化が顕著で、メディアはキャッチーな「見出し」勝負のPV至上主義に陥っていると危惧しています。そして、そうした一瞬のアクセス数だけを目的としたメディアビジネスは、焼畑農業的で継続しないと。

 

これはメディアを創る側にも責任があるのかもしれませんが、受け手の側にも責任があると思います。

 

今、どんどん日本人の感性が劣化していっているような気がします。

よりシンプルでわかりやすいものを求める傾向が強まっています。

 

ノンリニアではない、長時間かけて楽しむコンテンツには、単発のコンテンツにはできない良さがあると思うのです。長時間かけなければ理解できない文脈や複雑な構成の中にこそ、奥深さがある。

 

人々が単純なもの、わかりやすものを求めれば求めるほど、そういった深いものを読み取る力が失われてしまう。これは文化的な損失ではないでしょうか。

 

こうした話を読書会でしたところ、かつて小説は短編小説ばかりがもてはやされていた時期があったけど、やがて長編小説が受け入れられるようになり、短編小説しか書けない作家は消え、長編小説を書ける人が残ったという。だから、きっと揺り戻しがあるはずだと。

 

やがて、受け手の側も浅薄なコンテンツに飽きて、もっと深みのある複雑なコンテンツを求めるようになるのでしょうか。

 

情報爆発の時代、あまりにも情報が氾濫しすぎて、どれだけ質が良くても見つけてもらえないというマーケティングの問題が深刻になっている。それでも、やはり一時の大衆迎合なコンテンツではなく、質を追求し続ける姿勢が大切。まさにジレンマですね。

 

時間に追われる今の時代が果たして良いのか。

忙しさの中で、本当に必要なものとは何かを問い直す時期が来ているように思いました。