本とぽんず

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書評『外資系金融の終わり』

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

 

『金融日記』という人気ブログの運営者で、外資投資銀行でトレーダーをしている藤沢数奇さんの本です。

 

外資系金融の実態が、かなりぶっちゃけて書かれています。

へぇーと思った部分を紹介します。

 

・トレーダーの年収

一体いくらもらっているんだろうって気になりますよね。実績次第ですが、外資投資銀行で年収3000万円〜3億円だそうです。ここでいうトレーダーというのは、その銀行の自己勘定で運営する人であって、顧客注文を取次ぐだけのトレーダーは、2000万円ぐらいとか。他の職種の人たちは、こんなに給料は高くないみたいです。

 

・セールス部隊はキャバクラ経営

機関投資家へ金融商品を売るお仕事。これ、毎朝電話をかけるだけの簡単な仕事とばっさり斬っておられます。機関投資家もおっさんからの電話だと喜ばないので、外資投資銀行では、可愛くてちょっと頭が悪いぐらいの女子大生を採用するそうです。夜は酒を飲みながら接待だとか。

 

これって、まさにバブル時代のザ・日本企業じゃないですか!

世の中の真理はいつの時代も変わらないんですね。お金を持っていようが、可愛い子に営業されれば悪い気はしない。

 

・人事部は死刑執行人

ずっと気になってたのですが、なぜ外資系って、あっさり社員をクビにできるのだろうと。日本だと労働基準法の解雇要件が厳しいはずですよね。

 

外資投資銀行では、クビを通告されると、その瞬間から警備員につかれて、オフィスに立ち入りになる。これはよく聞きます。その後、法律上の雇用関係は継続しているので、人事部は会社を辞めてもらうように説得にかかるそうです。訴訟されないように、割増し退職金というエサをぶら下げ、一方で訴訟などしたら次に就職できないぞと脅し。その人事部の評価は、何人、すんなり辞めてもらえたかで決まるとか。

 

・バックオフィス、ミドルオフィスは奴隷

トレーダーが一番エライ。他とは身分が分かれており、カースト制度だと思えばいいそうです。外資系って怖い。

 

 

と、外資投資銀行の内部が紹介されてますが、本書のメッセージは、金融危機後、当局の規制が厳しくなっており、どんどん金融が社会主義化していることを嘆いていることです。

 

経営危機に陥るたびに、政府が救済する。こうして保護されていた金融機関をさらに、規制で厳重に管理し、これまでのように自由に投資業などを行えないようにする。いわゆる、ボルカー・ルールとバーゼルⅢによる規制強化で、金融機関はめったにつぶれない構造にしてしまえというもの。

 

こうした金融保護主義は、社会主義の発想だ。つぶれてもいいリスクを取るがゆえに、自由を認めろというのが著者の主張です。そのために銀行を分割すれば良いと。

 

外資投資銀行の人って、貪欲だ。

 

なんだかこれ読むと、真面目に働く気分を削がれます。